漆絵職人を訪ねる。
色漆を追求する表現者
Marubon / Night ZOO
伝統工芸・山中漆器の産地、加賀市山中温泉。さまざまな職人の営みがある街は、観光地としても近年多くの人が訪れる自然豊かな山間の温泉街です。
Kaga / Yamanaka Onsen is a production center for lacquer ware. There are various craftsmen's activities, and the town where daily work is done is a land that many people visit in recent years as a tourist destination.
Marubonの絵付けをしている大岡靖治さんは、山中漆器の漆絵職人として45年のベテラン、先代からの漆絵工房を継いでいます。若い頃には造船会社で工業塗装を経験し、漆絵の発色や色調、絵付けの技法に伝統工芸だけではない視点や知識を加わえ、こだわりをもって取り組まれています。
漆絵職人として45年、日々重ねる研鑽と常に新しい手法や素材を用いて仕事をこなされています。工房を訪れるたびにそういったさまざまな工夫や試行錯誤の話を聞かせもらうことができるのも大岡さんの工房を訪ねる楽しみの一つです。
Yasuharu Ooka, who paints Marubon, is a 45-year veteran of Yamanaka lacquer ware. He has been a urushi-e studio since his predecessor, but when he was young, he also worked at Hitachi Zosen for industrial painting. Such experience adds to his knowledge of color development and color tones, and his study and commitment to his technique as a traditional craft.
Marubonのイラスト原画を下絵付けの薄紙で写しとり、5色に塗りあがった木地に線を写していきます。今回は、アヒル、キリン、ネコ、クジラそしてカメレオンの5種類のモチーフ。普段は伝統の和文様や草木柄の絵付けが主なモチーフですが、近年ではそれに限らずさまざまな表現の絵付けの依頼があるそうです。職人としてどんな絵柄でも漆絵で再現していきます。
迷いなく滑らかにすすむ筆さばき。一見簡単なようにみえて、漆の粘り気がある絵の具を使って掠れることなく下絵に忠実に描くには高い技術を要します。
制作途中の漆器の保管と乾燥を促す“漆風呂”と呼ばれる専用棚。漆に必要な湿度や温度環境を整えて漆絵を仕上げていきます。一度に色を塗り重ねることができない為、クジラの体を塗ったらアヒルの顔を描き、次にカメレオンのシマ模様を描き入れるなど、いくつかの木地の仕事を交互にこなしていきます。
大岡さんには漆絵を継ぐ弟子や新しい職人がいません。日本全国で伝統工芸が盛り上がっていた時代が過ぎ、斜陽産業としての現状のまま誰かに繋ぐことを良しとしなかったご自身の判断です。それでも氏の培った技や実績は素晴らしいものとして多くの道具を生み出してきました。これからもその仕事を世に届けるべく、ともに仕事をしていきたいと思います。